アレクサンダー・カルダーによる東京での約35年ぶりとなる個展「カルダー:そよぐ、感じる、日本」を開催します。本展は、アメリカのモダンアートを代表するカルダーの芸術作品における、日本の伝統や美意識との永続的な共鳴をテーマにしています。この展覧会は、ニューヨークのカルダー財団理事長であるアレクサンダー・S.C.ロウワーのキュレーションと、Paceギャラリーの協力のもと、カルダー財団が所蔵する1920年代から1970年代までの作品約100点で構成され、代表作であるモビール、スタビル、スタンディング・モビールから油彩画、ドローイングなど、幅広い作品をご覧いただけます。
カルダー自身は生前日本を訪れたことはありませんでしたが、日本の多くの芸術家や詩人に受け入れられました。それは、今日、彼の作品20点以上が日本国内18箇所の美術館に収蔵されていることからもわかります。
アレクサンダー・カルダー(1898年〜1976年)
カルダー(1898年ペンシルベニア州ローントン生、1976年ニューヨーク市没)は、20世紀を代表する芸術家です。古典的な芸術家の一家に生まれた彼は、針金を曲げたりねじったりすることで、立体的な人物を空間に「描く」という新しい彫刻の手法をあみだし、芸術活動をスタートさせました。吊るされた抽象的な構成要素が、絶えず変化する調和の中でバランスを保ちながら動く「モビール」の発明で最もよく知られています。1931年にマルセル・デュシャンによって造られた「モビール」という言葉は、フランス語で「動き」や「動因」を意味します。初期のモビールにはモーターで動く作品もありましたが、しだいにカルダーは作品を機械駆動させることをやめ、気流や光、湿度、人間の相互作用に反応する作品を多く制作していくようになります。モビールの重要な要素として「動き」を用いた彼は、キネティック・アートの先駆者の一人となりました。また、カルダーは、芸術家仲間でもあるジャン・アルプが「スタビル」と名付けた静止した抽象的な作品も制作しています。
カルダーは、動く彫刻であるモビールによって近代彫刻の概念を一変させ、最もその名を知られていますが、絵画、ドローイング、版画、宝飾品など、数多くの作品を制作し、幅広い分野で活躍しました。1950年代以降になると海外からの制作依頼に関心を向けるようになり、ボルトで固定した鉄板を使った壮大なスケールの屋外彫刻の制作にますます力を注ぐようになりました。今日、これらの記念碑的な作品は、世界中の公共スペースで見ることができます。
「カルダー:そよぐ、感じる、日本」広報事務局
Email:az-gallery@mori.co.jp
本展の会場デザインを担当し、長年のカルダー財団の協力者でもあるニューヨーク拠点の建築家、後藤ステファニーは、カルダーが同時代の偉大な建築家たちとコラボレーションしていた精神にならい、3:4:5の直角三角形の幾何学にもとづいた設計で、日本建築の要素や素材をエレガントかつモダンに展示空間に取り入れています。
展覧会は、三角形の斜辺に言及する形で配置された2つのパビリオンを中心に展開し、茶室や能舞台を想起させる正方形の展示室は、ギャラリーの中央に位置しています。空間に対する認識は、空間ばかりか時間の意味でも「中断」を示唆する「間」によって強められ、木、紙、漆喰など日本の伝統的な素材がこの中断や不在の感覚をいっそう強調します。また、パビリオンの天井の透明なパネルから差し込む光は、ジグザグに張り出した庇のような線を描き、身体的で触感的な要素を加えています。
長年にわたるカルダー財団の協力者でもある日本人建築家。建築や文化、芸術、ガストロノミー、ホスピタリティの関係性を内包した、真にユニークで体験的な空間設計を行う第一人者。2004年に集学的アプローチによる実践の基礎を築き、カルダー財団の「プロジェクト・スペース」や、ハウザー&ワース(ロサンゼルス)およびPaceギャラリー(ニューヨーク)でのカルダー展の空間デザイン、シーザーストーン・エクスペリエンス・センター(ジョージア州)、ドン・ペリニヨンのためのマルチセンサリー体験デザイン、そして2023年には日本初のプロジェクトとなるThe Shinmonzen(京都)のジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリステンのレストランなど、さまざまなプロジェクトを手がける。
本展を開催するにあたり、カルダー財団理事長でありカルダーの孫でもあるアレクサンダー・S.C.ロウワー、Paceギャラリー CEOのマーク・グリムシャーよりメッセージが寄せられました。
アレクサンダー・カルダーは、当ギャラリーの歴史においても、モダニズムの歴史においても、最も重要な人物の一人です。Paceギャラリーが初めてカルダーの展覧会をニューヨークで開催したのは1985年のことでした。この約40年間、カルダー財団と強い関係を保ってこられたことに感謝しています。「カルダー:そよぐ、感じる、日本」は、歴史的な展覧会になると同時に、麻布ヒルズ ギャラリーとの特別なパートナーシップの幕開けとなります。将来的な企画協働において、さまざまな作家の作品を東京の皆さんにご紹介できることを楽しみにしております。また今夏、Paceギャラリーとしては日本に初めてのギャラリーをオープンできることを嬉しく思います。
マーク・グリムシャー
Paceギャラリーは、アーニー・グリムシャーによって1960年に設立された世界をリードする国際的なアートギャラリーです。現在は彼の息子であるマーク・グリムシャーが率いており、20世紀の伝説的なアーティストや今日最も影響力のある現代アーティストが含まれています。ギャラリーはニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、ジュネーブ、香港、ソウルに7か所の拠点を持っています。2024年に麻布台ヒルズに新しく開設される東京のギャラリーは、世界で8番目の拠点となります。ギャラリーは3階建てで、内装は藤本壮介によってデザインされています。
Rendering of Pace Gallery, Tokyo. © DBOX for Mori Building Co., Ltd - Azabudai Hills販売期間:2024年5月30日(木)10:00 ~ 2024年9月6日(金)12:30
※( )内はウェブからの事前予約料金です。
※オンラインでのチケットに在庫が残っている場合にのみ窓口でチケットの購入も可能です。
※中学生以下は入館無料です(要学生証提示)。
※ローソンチケットでも本チケットを販売しております。ローソンチケットでご購入の場合には、ローソンチケットにて発券したチケットを当日ご持参ください。詳細はこちら
ローソンチケットの販売期間は以下の通りです。
販売期間 | 2024 年5月29日(水) 23:59 〜 9月6日(金) 09:00
※障がい者手帳をお持ちの方とその介助者(1名まで)は通常料金の半額となります。予約不要、来館時にインフォメーションカウンターで障がい者手帳をご提示のうえ、チケットをお買い求めください。
祖父の作品には、日本の伝統と共鳴する繊細さと優美さがあり、崇高で儚いものに対する深い敬意があります。「カルダー:そよぐ、感じる、日本」では、祖父のモビール、スタビル、スタンディング・モビールが思索と自己創造のための空間をつくりだす様をご覧いただけます。カルダーが終生抱いていた日本の美学と文化への憧れに寄り添い、彼が制作において取り組んだ不均衡性や非対称性、近似性の中にある自由さにもとづいて、直感的にキュレーションしています。
アレクサンダー・S.C.ロウワー